飲食すし「1皿100円」終わり近い

年1~2%程度しか成長しない外食産業の中で、2015年に10%近い成長率を記録した「回転寿司」業態。しかし2016年は成長に急ブレーキがかかった。中小チェーンを淘汰して大手5社の市場シェア占有率は約75%に及ぶが、原材料高騰、人件費高騰という「厳しい試練」がふりかかる。「月刊コンビニ」「月刊飲食店経営」編集委員・梅澤聡氏も「いずれ値上げせざるを得なくなる」と指摘するなど、回転寿司の代名詞ともいえる「1皿100円」の看板をおろさざるを得ない日が間近に迫っている。

●回転寿司の成長は昨年、頭打ちになっていた

 「回転寿司」は、都市部では80年代にその店舗数を大きく伸ばし、昔気質の寿司職人やうるさい食通から「邪道」「日本の伝統食の堕落」などと蔑まれながら、「ハレの日の食」だった寿司の大衆化に大きく貢献した。

 個々のネタの好き嫌いはあっても「お寿司が嫌い」という日本人はほとんどいないので、回転寿司の店は今日もサラリーマン、学生、おしゃれな女子、子連れママ、高齢者など世代、男女を問わず来店客でにぎわう。

 日本語が話せなくてもお好みのネタの「SUSHI」が食べられるから訪日外国人も入りやすい。アジアや欧米の主要都市にも進出して、寿司の食文化を世界中の人々に広めている。

 エヌピーディー・ジャパンの「外食・中食データ情報サービス(CREST)」によると、2016年の回転寿司の国内市場規模は6429億円だった。社団法人日本フードサービス協会の「平成28年外食産業市場規模推計」によると、2016年の全国のすし店の市場規模は1兆5028億円。回転寿司のシェアは42.7%にも達している。

 そのように回転寿司が幅広い消費者に支持された最大の理由は、その低価格にある。1皿=2貫(にぎり寿司2個)=100円はまさに「寿司の価格破壊」のシンボルで、集客の武器と言えた。だが今、看板に大書きされて回転寿司の代名詞のように定着した「1皿100円」は、存亡の危機を迎えている。

 ついこの間まで、回転寿司は「デフレの勝ち組」と呼ばれ、国内市場は大きく拡大していた。「外食・中食データ情報サービス」によると、2年前の2015年も回転寿司の国内市場規模は6317億円で、前年比で9.7%も成長していた。ところが昨年2016年になると前年比伸び率は1.8%とブレーキがかかった。2017年の予測も市場規模6570億円、伸び率2.2%で、元のような急成長には戻らない見通しである。


 2015年は、回転寿司業態全体の平均客数の前年比伸び率は6.4%、平均客単価のそれは3.1%と成長している手ごたえがあったが、2016年の伸び率は平均客数が1.8%、平均客単価がプラスマイナス0%へ、大きく落ち込んだ。2017年の見通しも平均客単価こそ1.9%伸びるが、平均客数伸び率は0.3%へ、さらに落ち込むと予想されている。


 首位のスシローの業績を見ても、2017年9月期の上半期(2016年10月~2017年3月)は全店売上高8.4%増、既存店売上高0.6%増、既存店客数0.2%増、既存店客単価0.4%増ですべてプラスだったが、下半期(2017年4~9月)になると全店売上高が3.9%増へ減速し、既存店売上高は3.1%減、既存店客数は2.5%減、既存店客単価は0.6%減と、前年同期比でマイナスに転じている。

 外食産業担当のあるアナリストは「マクドナルドの業績が好調で、子連れ客が回転寿司からマクドナルドに流れたことも考えられます」と指摘する。

 拡大が続いた回転寿司という業態は成長が頭打ちになっただけでなく、近い将来のマイナス成長、市場規模の縮小もありうるような状況に一変している。

●大手5社が中小チェーンを淘汰して寡占化が進行
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171202-00034306-biz_plus-bus_all&p=1