五輪三宅宏実(いちご)、重量挙げ界のドーピング問題に懸念

12/3(日) 12:17配信
朝日新聞デジタル

重量挙げ界の改革を支持したIOCのバッハ会長

 五輪競技として100年近い歴史がある重量挙げが、存続の危機にある。五輪メダリストなどにドーピング違反者が相次いでいることを受け、国際オリンピック委員会(IOC)は、国際重量挙げ連盟(IWF)に改善策を示すように要求している。今月5、6日にスイス・ローザンヌであるIOC理事会で不十分と判断されれば、24年パリ大会の実施競技から外れる可能性がある。

 IWFは11月下旬の理事会で組織改革案を承認し、その内容をIOCに提出することを決めた。違反が多い国では競技会外での抜き打ち検査を増やし、反ドーピング対策への取り組みが甘い国の連盟には、最大で4年国際大会への出場権利を取り上げるなどの項目を盛り込んだ。

 IWFのアヤン会長は「積極的に是正に動いている。重量挙げ界は新しい章のスタートを切れた」との声明を出した。

 重量挙げ界のドーピング問題は深刻だ。2015年の世界選手権(米ヒューストン)では24選手の検体から陽性反応が出た。08年北京五輪と12年ロンドン五輪を対象にしたIOCの再検査では全競技のなかで最多の計49件(9月発表時)の陽性反応が発覚している。

 事態を重く見たIOCは、20年東京大会では16年リオデジャネイロ五輪から男子1階級の削減を決め、さらに出場選手を64人減らす。24年パリ大会は、リオ五輪と同等の28競技を行うことを9月のIOC総会で承認したが、重量挙げだけは今月の理事会で判断すると保留。IOCのバッハ会長は、内容次第では外す可能性にも言及している。

 第1回の1896年アテネ大会や、1904年セントルイス大会で体操の種目として行われた重量挙げは、1920年アントワープ大会からの正式競技。しかし、ある五輪経験者が「みんな使っているから、禁止薬物を使わないと勝てない、という空気すらある」とこぼすほど、手を汚す者は後を絶たない。

 IWFは9月、08年北京、12年ロンドン大会で3件以上の違反が出た中国やロシアなど9カ国に1年間の資格停止処分を科した。重量挙げ女子48キロ級の日本の第一人者で、ロンドンは銀、リオで銅メダルを獲得した三宅宏実(いちご)は、これを機に浄化を願う。「未来のオリンピックで(重量挙げが)なくなると、子どもたちの夢がなくなってしまう」

 IOC理事会の判断に注目が集まる。(遠田寛生)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171203-00000018-asahi-spo