社会TPP大筋合意に伴う、「著作権70年」は長過ぎ? 高知県、研究・学習や図書館への影響懸念

著作権70年は長過ぎ?高知県でも影響懸念 研究、学習や図書館
高知新聞:2017.12.02
http://www.kochinews.co.jp/article/143326/
(前文略・全文はソース)

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ネット上では目隠し公開される高校入試の過去問題


 「田舎でこんな展示ができるのは、著作権が切れた史料がネットで見られることが大きい」

高知県安芸郡安田町教育委員会の中村茂生さん(52)が話す。

 「安田まちなみ交流館・和」には、海援隊士の足跡をたどる年表や写真が並ぶ。ほとんど明らかになっていなかった史実を、全国の膨大な史料から一つずつ拾ったという。

 「書庫にこもったり日本中の図書館を回ったり、10年かけて見つけていたような史料が安田にいながら見られるようになった」と中村さん。
「デジタル化が進めば情報が効率的に集められて、田舎での研究が進む。保護期間が死後70年は、ちょっと長過ぎと思う」

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著作権に関する注意書き(高知県立図書館)

 ■コピーは「半分」

 著作権は、作者や遺族らが使用料などを得られる権利。許可のない複製や改変もできないように規制されている。

 死後70年への延長は、2015年の環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意に伴う。
米国の離脱で凍結項目となっているが、欧州との経済連携協定(EPA)では大枠合意した。まだ日本では施行していないものの改正法は昨年成立している。

 著作権について高知県立図書館の山重壮一専門企画員(55)は、「日本中の図書館が説明に苦労しています」と話す。

 週末の高知県立図書館には、研究者や卒業論文を書く学生らが県外や海外からも訪れる。
高知県立図書館にしか所蔵がなく、書店での購入も貸し出しもできないような郷土資料を目当てに来る人もいる。

 しかし必要な資料を調べきれずコピーする場合、著作権法上「一部分」しかできない。高知県立図書館は多くの図書館と同様「半分以下」として運用している。

 「半分」の解釈も悩ましい。小説1作品なら、全体のページの半分までコピー可能。
ただ、地図なら見開き1ページ、俳句なら1句、辞典の1項目も一つの著作物とする解釈があり、コピーした地図を職員の目の前で半分以下に切ってもらうこともあるという。

 教育現場にも波及する。高知県教育委員会がWebサイトで公開している公立高校入試問題。
国語の問題文の評論が「著作権保護のため掲載していません」と目隠しになっている。
入試本番では表示できても、2次的な利用では使用料を支払う必要があるからだ。

 担当者は「この状態では中学生の参考になるとは言えない。何とかしたいと思ってはいるのですが…」と眉根を寄せた。

 ■経済的視点必要

 一方、著作権に詳しい弁理士、城田晴栄さん(香美市土佐山田町楠目)は「保護期間の延長は、良いとも悪いとも一概には言えない」と説明する。

 著作物が使用しにくいことで「新しい文化が生まれるハードルになる可能性はある」という。
その上で「ヒットすれば莫大(ばくだい)な利益を生むのが知的財産。経済的な視点からも見るべきだ」と指摘する。

 例えば、世界中で人気のミッキーマウスには莫大な著作権収入がある。
米国がミッキーの著作権が切れそうになるたび保護期間を延長する法案を可決してきたため、米国の著作権法は「ミッキーマウス保護法」とも皮肉られる。

(中略)

 ■楽しみ増える

(中略)

 高知県立図書館の山重さんによると、読書好きの一般利用者にとっても、著作権が切れることで楽しみが増える面があるという。
例えば「星の王子さま」の場合、著作権が切れた2005年以降、新訳が次々と発表された。

 “立ち位置”によって光も影もある著作権
50年のままなら2018年1月1日に山本周五郎、2021年に三島由紀夫、2022年に志賀直哉、2023年に川端康成作品の保護期間が満了する。