準天頂衛星「みちびき」を使った自動運転の実証実験を公開

12月3日 17時40分 IT・ネット


国家プロジェクトとして進む車両の安全な自動運転の実現に向け、位置情報の精度を誤差数センチまで高める日本版GPS衛星「みちびき」を使って公道で行われている
初めての実証実験の様子が3日、公開されました。
日本版GPS衛星「みちびき」はアメリカのGPSを補完し、位置情報の精度を飛躍的に高める衛星で、誤差を現在の最大10メートルほどから数センチ程度にまで縮めることが
可能です。

内閣府は、「みちびき」に加えて、道路標識や信号、建物などを丸ごと再現した仮想空間をコンピューター上に作り出す高精度の3次元地図を整備することで、安全な自動運転の
実現を目指しています。

ことし10月末から沖縄県宜野湾市北中城村を結ぶおよそ20キロの公道でみちびきの信号を使った初めてのバスの自動運転の実証実験を行っていて、その様子が3日報道陣に
公開されました。バスは、「みちびき」で特定した位置情報を高精度3次元地図の中に落とし込んでルートを決めます。

そしてレーダーなどで捉えた周囲の状況から人工知能が車や障害物を判断して速度を調整しながら走行します。
実験ではほかの車が近くを走っていても、車線の変更や、交差点での右折などを安全にできているか確認していました。

内閣府は、3年後の東京オリンピックパラリンピックの会場などでの運用を目指していて、杉江薫政策調査員は「高い精度が求められる車線の変更がスムーズにできた一方で
周辺の状況の把握で課題も見えた。安全な自動運転を実現できるようにしたい」と話していました。
3次元地図とは自動運転の実現に不可欠な高精度の3次元地図は、道路の車線や傾斜、道路標識やカーブの緩急のほか、信号機の色や、事故や渋滞、それに周囲の車両や
歩行者のリアルタイムな情報をひも付けたいわばデジタルの仮想空間です。その作製が日本で進められています。

作製には、屋根の上にレーダーやカメラ、GPSなどの受信機を搭載した車両を走らせ、周囲の道路や建物、標識などの情報をリアルタイムに3次元地図にデータ化します。

データは、小さな点の集まった3次元の点描で、その1つ1つに経度、緯度、高さの情報が埋め込まれています。

新大阪駅名古屋駅周辺をデータ化した画像は、街がそのままデジタル空間に落とし込まれたかのように周囲の建物などが高精度に表現されています。

自動運転に使われる場合には、高精度3次元地図のデータを基に車線や信号、標識などの運転に必要な情報を抜き出し、搭載したセンサーの情報と合わせて、今どこにいるのか、
どこに向かうのか、どのように動かせばいいのかを車両自身が判断することになります。

地図があることで、車載のセンサーだけでは届かない範囲も地図を通じて把握でき、走行経路の選択や合流地点の調整に役立つほか、雪などの天候で車線が見えない場合でも
走らせることができるようになります。

内閣府では、東京・港区台場や首都高速道路東名高速道路などの一部の合わせて300キロの区間で高精度な3次元地図を作成し、自動車メーカーに配布して地図の実証を
進めているほか、海外の自動車メーカーも呼び込み世界標準化を目指しています。

内閣府葛巻清吾プログラムディレクターは「高精度な3次元地図は自動運転には不可欠で、日本の技術は他国にも劣っていない。地図作りの手法を含めてパッケージ化して
世界に売り込んでいきたい」と話しています。

ソース:NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171203/k10011245051000.html