法科の中央大学中大内紛 学長選任、異例の否決 改革派教職員VS重鎮幹部理事会 尾を引く中学入試不正問題

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 中央大学(東京都八王子市)の次期学長をめぐる対立が激しさを増している。10月の学長選で当選した元学長で法科大学院法務研究科の福原紀彦(ただひこ)教授(63)の就任を評議員会と理事会が否決し、反発した教職員側は選挙結果を尊重するよう全学部で決議した。背景には平成24年に起きた付属中学の不正入試問題に端を発する対立があるようだ。法学部を看板とする「法科の中央」で勃発した内紛劇は、4日の理事会でヤマ場を迎えるとみられる。(市岡豊大)

 「不正入試問題で責任が認定された福原氏を選任するのは理解できない」「選挙で選ばれた福原氏を選任しなければ中央大学が崩壊してしまう」

 東京都千代田区内で10月28日に開かれた中央大の評議員会は、福原氏の学長選任案をめぐり夜まで激論が交わされたという。関係者によると、評議員125人の投票で選任案賛成は委任状を含め過半数以下の55票。続く理事会も「評議員会の結論を採用すべきだ」などの意見が出て否決された。

 福原氏は、酒井正三郎学長(67)の任期満了に伴う同月1日の選挙で酒井氏らを破り当選。規定上、「理事会が評議員会の議を経て選任する」とされるが、選任否決は「約40年前にできた現規定で初めて」(中央大)という。

 否決理由の一つは都心移転計画に対する福原氏の姿勢だ。昭和53年に郊外へ移転した同大は平成27年に法学部などの再移転を決定。司法試験合格率で他大学の後塵(こうじん)を拝している大学の「復活をかけた計画」(関係者)だったが、福原氏が「財政検証が必要」と主張し、一部で「計画推進が阻害される」と懸念が出ていたという。

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 ただ、福原氏は都心移転自体には反対していないという。ある大学幹部は「真の対立要因は改革派の福原氏に、重鎮幹部が抵抗していることだ」と明かす。

 この重鎮幹部は、元精糖会社社長で日本経済団体連合会経団連評議員などを歴任した久野修慈氏(81)。同窓会組織である学員会の会長に10年間以上にわたり就いている。

 両者の対立が表面化したのは平成24年。ある大学OBの孫が付属中学を受験した際、当時理事長だった久野氏が中学校長(辞任)に孫の名前を伝え、不正に合格させたとされる問題が発覚した。久野氏は「特別な計らいは要請していない」などと意図的な関与を否定したが、学長兼総長だった福原氏ら教職員側の追及で理事長を解任された。

 一方、第三者委員会は当事者の久野氏だけでなく、合格取り消しを指示した福原氏についても「一方的な事情での取り消しは法秩序に違反する」として責任を認定。後に福原氏も総長職を辞任した経緯がある。

 大学幹部は「理事や評議員の選考に大きな影響力を持つ学員会長の久野氏と、改革を訴える福原氏を支持する教職員との対立もある」と説明する。

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 産経新聞の取材に対し、久野氏側は「学員会は大学と別組織なので取材には応じられない」、大村雅彦理事長側は「学内に見解の相違はあるが、『対立』なる状況は存在していない」などとそれぞれ回答した。

 大学OBで作家の門田隆将氏は「福原氏が不正を黙認すれば『法科の中央』は致命的ダメージを負っていた。少子化の中、生き残りをかけた都心回帰も実現できておらず、正当に選ばれた学長を選任しないなどという無益な争いをしている場合ではない」と話す。
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