旧センター試験大学共通テスト試行、問題2割増 情報処理力必要に

文部科学省は4日、大学入試センター試験に代わって2020年度に始まる「大学入学共通テスト」の試行調査(プレテスト)の問題と結果を公表した。複数の文章や図、グラフを読ませる問題が多く、4教科11科目で問題のページ数はセンター試験より2割増えた。共通テストは考える力に加え、情報を素早く処理する力も問われる試験になりそうだ。

試行調査は11月13~24日、全国約1900校でのべ18万人の高校生が受験した。共通テストでは国語と数学I・Aに記述式問題が導入され、マークシート式問題も思考力を問う内容に変わる。今回の調査もこれと同じ形式で、地理歴史・公民、理科を含む計11科目で実施。民間の検定・資格試験を活用する英語は行わなかった。

 各科目の問題のページ数を過去3年のセンター試験で最も多かった時と比べると、現代社会、物理、化学を除く8科目で7~100%増。11科目合計のページ数は363ページと18%増えた一方、問題数は計288問と8%少なく、1問あたりの情報量が増えた。

 数学I・Aは身近なテーマについて生徒が議論する場面などを多く設定し、ページ数が2倍になった。数学2・Bと合わせると8割増。

 国語では高校の生徒会で部活動について話し合う記述式の大問で生徒会規約、会話文、部活終了時刻のデータなど計5種類の文章を示した。古文は源氏物語の同じ一節でも、解釈の違いで表現が大きく異なる3種類の文章を読み比べさせた。

 作問や採点を担う大学入試センターは試行調査のうちマーク式問題の正答率(速報値)を公表した。正答率の範囲は0.9~87.1%で、過去のセンター試験と大差なかった。科目ごとの平均正答率は公表しない方針だが、センター試験に比べると低い科目が多かったようだ。記述式は今後採点し、全体の結果分析も含めて18年3月末までに公表する。

 センターは試行調査の問題構成について「思考力・判断力・表現力を問う新しい傾向の問題の割合をあえて多くした」と説明している。本番の問題作成に向け正答率などのデータを集めるとともに、求める学力像を明確に打ち出す狙いがある。

 今後は18年2月に英語のみの試行調査を実施。同11月に行う10万人規模の試行調査では知識・技能をシンプルに問うような問題を増やし、本番に近いバランスにするとしている。

 マーク式問題で正答率が低かったのは、ある事柄の概念や因果関係を問うような問題。日本史Bでは1950年代の経済成長に関し「神武景気」を「大型設備投資による景気拡大」と表現した選択肢を正解としたが、正答率は21%だった。

 異なる分野の知識を合わせた問題でも課題がみられた。物理ではブランコが揺れる周期を短くする方法について、ひもを短くする、重心を上げると異なる単元の知識を同じ小問で尋ねたが、正答率は21%だった。

 マーク式では、正答の数を示さず「正しいものを全て選べ」という新しい形式の問題を計14問出した。正答率は30%未満が12問、うち3問は10%未満だった。センターは結果を分析し、一部の選択肢のみ合っていた場合に部分点を出すかなども含めて検討する。

 共通テストは高校・大学教育と入試を一体で改革する国の「高大接続改革」の目玉。今後は記述式問題の採点体制、段階別評価も含む成績評価の方法、英語の民間試験の選定などについて検討を進める。19年度初めに詳細な実施大綱を策定し、21年1月に初回を実施する。英語の民間試験は20年4月から受けられる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24220300U7A201C1000000/