税制改正所得税控除見直し “年収800万円超で増税” 最終調整へ 会社員は増税、自営は減税に

来年度の税制改正の焦点となっている所得税の控除の見直しで、政府・自民党の検討案が明らかになりました。会社員の税の負担を軽くする給与所得控除の上限を今より30万円引き下げ、年収800万円を超える人が原則、増税になるように見直すことなどで、所得税全体で1000億円程度税収が増える案を軸に最終調整に入る方針です。

それによりますと、会社員などの所得税の負担を軽くするために給与から一定額を差し引く給与所得控除は、まず、すべての人を対象に10万円縮小します。そのうえで、所得の高い人については控除の上限を引き下げ、年収800万円以上の人は一律190万円で線引きします。

今の上限は年収1000万円以上の人で220万円ですが、30万円下がることになります。これによって年収800万円を超える人が今よりも増税になります。ただ、22歳以下の子どもがいる人や在宅で介護をしている人は、増税にならないようにします。

また、年金収入から一定額を差し引く公的年金等控除についても、すべての人を対象に10万円縮小します。また、年金収入が1000万円以上の人は、控除の額が195万5000円で頭打ちになるよう、新たに上限を設けます。さらに、年金以外の所得が1000万円を超える人は10万円、2000万円を超える場合は20万円それぞれ控除を減らし、収入が多い高齢者は増税になります。

逆に、会社員や自営業などすべての納税者が対象になる基礎控除は、控除の額をより10万円引き上げて48万円に増やし、税負担を軽くするようにします。ただ、これも所得が2400万円を超える人は控除の額を徐々に減らし、2500万円で控除がなくなるようにします。

これらの案が実現すれば、年収800万円を超える会社員などは増税に、自営業者は減税になり、所得税全体では1000億円程度、税収が増えることになります。

ただ、与党内には、景気への影響などを懸念する声もあることなどから、今月14日の税制改正大綱の取りまとめに向けて最終的な調整を進める方針です。

■3つの控除見直し

今回の見直しされるのは、給与所得控除、公的年金等控除、基礎控除の3つです。

【給与所得控除】
給与所得控除は、会社員などの所得税を計算する際、給料の一定額は必要経費になっていると見なして収入から差し引くことで税の負担を少なくする仕組みです。ただ、対象になるのは会社員などで、企業から仕事を請け負って会社員と同じような仕事をするフリーランスの自営業者は適用になりません。

このため、働き方や稼ぎ方で控除に差が出ないよう、給与所得控除を全体的に10万円縮小し、そのかわりに、すべての納税者が対象で一律38万円が差し引かれる基礎控除と呼ばれる控除を10万円増やします。これによって、自営業者は減税になります。

さらに、所得の高い人には控除額に上限を設けていますが、これを引き下げ、年収800万円以上の人は一律190万円で線引きします。
今は年収1000万円以上の人は220万円で線引きされているため、上限は30万円下がることになります。

この結果、800万円を超える会社員などは原則、増税になります。

例えば、年収850万円では今よりも年1万5000円程度、900万円では年3万円程度、950万円では年4万5000円程度増税になります。

ただ、22歳以下の子どもがいる人や、重度の障害があり介護が必要な家族と同居している人は増税にならないようにします。

これらの見直しで、民間企業に勤める人のうち5%程度が増税になるということです。

公的年金等控除】
※一部省略

これにより、年金収入が1000万円を超える人や年金以外の所得が1000万円を超える人は増税になります。
年金収入が1000万円を超える人は3000人程度、年金以外の所得が1000万円を超える人は年金受給者のうちおよそ20万人、率にして0.5%程度だということです。

基礎控除
※一部省略

このように3つの控除を同時に見直すことによって、所得の高い会社員や高齢者は増税に、フリーランスなどの自営業者は減税になります。

配信12月4日 19時27分
NHK NEWS WEB
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171204/k10011246251000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_006