科学観測衛星「しきさい」12月23日打ち上げ 温暖化予測の精度向上に貢献

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 地球温暖化の仕組みの解明を目指す宇宙航空研究開発機構JAXA)の気候変動観測衛星「しきさい」が23日、H2Aロケットで打ち上げられる。誤差が大きい温暖化予測の精度を高め、的確な対策につなげる役割が期待されている。(草下健夫)

しきさいは雲や大気中のちり、地上の植生などを詳しく観測することで、温暖化予測の精度向上を目指す衛星だ。高度約800キロを南北に周回し、地球が自転することで2日ごとにほぼ全世界を観測できる。

 温暖化は大気中で二酸化炭素などの温室効果ガスが増加することで進行するが、将来の予測値にばらつきがある。雲や大気中のちりが太陽光を反射し、地上に届くのを遮ることで、温暖化をどの程度抑えるのかよく分かっていないことが大きな要因だ。

 また、植物は種類によって二酸化炭素の吸収量に差があり、植生の分布や変化が温暖化にどう影響するのか解明されていないことも予測を難しくしている。

 こうした問題を解決するため、しきさいは「多波長光学放射計」と呼ばれる高性能の光学センサーを搭載。地球からの光を近紫外線から熱赤外線までの幅広い波長帯で計測し、大気や地上、海洋などさまざまな場所で温暖化への影響を調べることができる。

 温暖化を探る衛星は2002年に「みどり2」が打ち上げられたが、故障のため1年足らずで運用を停止。しきさいはこの後継機で、みどり2では難しかった雲やちり、植生の観測に強みを持つ。

 陸の上空に漂うちりは、産業活動による影響が大きいため、温暖化予測で重要なデータになるが、観測は地表からの光に邪魔されるため難しい。約5年前までフランスの衛星が観測していたが、精度は低かった。しきさいは複数の手法を組み合わせることで高精度を実現し、初の本格観測に挑む。

 また、従来の衛星は機体の真下だけを観測するため植物の高さを把握できず、森林や草原、水田などの区別が難しかった。しきさいは斜め下も観測できるため高さが分かり、植生を識別できる。

 地上の観測範囲は最大で幅1400キロで、精度は最小250メートルときめ細かい。開発を統括したJAXAの杢野(もくの)正明プロジェクトマネージャは「雲やちりは変化が早く、2日ごとに観測する必要がある。そこで一度に広範囲を観測し、短時間で全世界をカバーするようにした」と話す。

 一方、しきさいは海面の温度や植物プランクトンの分布も分かるため、漁場の把握や赤潮の発生状況も観測できるという。

 国連の温暖化予測では、世界の平均気温は今世紀中に最悪のケースで2・6~4・8度上昇する。15年に採択された対策の国際的枠組み「パリ協定」では、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えることを目標に掲げたが、予測自体に約2度の誤差があるという課題を抱えている。

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