仮想通貨で資金調達ICO規制強化が招く「国外脱出」

https://jp.reuters.com/article/blockchain-regulation-tokens-idJPKBN1DV3FJ

2017年12月1日 / 03:12 / 1日前更新

Gertrude Chavez-Dreyfuss
[ニューヨーク 28日 ロイター] - 仮想通貨のデリバティブ取引事業を経営する米起業家バラス・ラオ氏が、事業資金の調達に最適な場所を検討した際、彼のリストに米国は入っていなかった。

米サンディエゴを拠点とする元技術者で、ウオール街の大手金融機関でも勤務経験のあるラオ氏が、代わりに選んだのはアフリカ東部の島国セーシェルだ。

このような決断を下す起業家は、彼1人ではない。

仮想通貨技術を使った「イニシャル・コイン・オファリング(新規仮想通貨公開=ICO)」と呼ばれる資金調達手法に対する当局の取り締まり強化を受け、起業家の多くが、より仮想通貨に寛容で税金の安い場所へとビジネスを移転させている。

数十社の新興企業が今年に入り、シンガポールやスイス、東欧やカリブ諸国に押し寄せていることが、ロイターが入手した企業の登記情報や起業家への取材で明らかになった。

2009年に誕生した最も有名な「ビットコイン」のように、ICOで使われる仮想通貨も、暗号化技術とブロックチェーン(分散型台帳)と呼ばれる取引記録データベースを使って、当局の規制下にある銀行や従来型決済システムを介さずに、迅速かつ匿名で資金の移転を行うことができる。

仮想通貨調査会社スミス+クラウンの調査結果は、ICO抑制へ乗り出した各国規制当局の試みが、事業者を他の拠点に移転させる結果に終わってしまうリスクを露呈している。

米国で新興企業が今年実施されたICOは34件で、世界で最多だった。だがそれは、規制環境が適していたからというより、世界の「テクノロジーハブ」としてのシリコンバレーの役割や、米国の金融市場の奥深さを反映した結果だ。

スミス+クラウンによると、シンガポールでは21件を記録しており、2016年の1件から急増。前年の3件から19件に増えたスイスがそれに続いた。中欧は前年比13件増の14件、カリブ諸国は同8件増の10件だった。

「スイスとシンガポールの人気が高いことが確認された。だが、米国は多額の調達を狙う企業向けの場所として残る可能性がある」と、スミス+クラウンの調査責任者Matt Chwierut氏は語る。
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