dot.ケツバット、ゴムパッチンも自主規制?TVをつまらなくする“忖度”

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171204-00000007-sasahi-ent

 2017年も残すところ1ヵ月ほどとなったが、例年この時期になると忘年会がやたらと多くなる。

 一般的には少し早い印象もあるかもしれないが、芸能界やテレビ業界、メディア業界ではクリスマス前から年末、年始にかけては何かとイベントが多く、テレビの特番や週刊誌の年末合併号に向けての準備などもあり、いつも以上に忙しい時期となる。

 そのため、少し早めの忘年会となるわけだが、不況の波にあえいでいるエンタメ業界だけに、自然とグチが多くなる。

 テレビ局員や番組制作会社のスタッフ、放送作家などと会うと、給料や番組制作費、経費の削減といった金銭面のグチとともにその口からたびたび出てくるのが、テレビ局による自主規制の話題だ。
 
 日本テレビの「ダウンタウンガキの使いやあらへんで! 大晦日年越しスペシャル!」といえば、年末恒例の人気特番として知られており、今年の大みそかにも放送が予定されている。

 同番組について今年10月、一部夕刊紙が、お笑いコンビ「ダウンタウン」ら出演者への罰ゲームとして用いられる“ケツバット”について、イジメ助長につながるとして局内で自粛すべきとの意見が出ていると報じ、これに対して出演者の松本人志が「どえらいガセ」と否定した。

 松本本人が完全否定している以上、“ケツバット”禁止は「ガセ」であることに間違いはないのだろうが、その一方でテレビを取り巻く自主規制の波は着実に高まっているのが実情だ。

 昨今のバラティー番組などで過激な企画や演出が取り入れられにくくなっていることは広く知られているが、例えばお笑いコンビ「ゆーとぴあ」が編み出し、かつてはバラエティー番組などで定番の罰ゲームとなっていた「ゴムパッチン」も、子供がマネしてケガをしたら危ないなどの理由で、局によってはすでに規制の対象になっている。

 最近では「熱湯風呂」でさえギリギリの状況というから、何とも世知辛い世の中である。

 こうしたテレビ局による自主規制の最も厄介なところは、確固たる規定や線引きがないところだという。

 知人の番組制作会社のスタッフいわく、「ある程度の共通認識はありますが、細かい話になると各局によって、もっと言ってしまえば各番組のプロデューサーによって線引きがバラバラなんです。それに多くのプロデューサーはリスクをとりたがらないので、ディレクターなど現場の人間からちょっと過激な企画や演出について相談された時点で上の意向を忖度し、『やめた方が良い』といった後ろ向きの判断をしやすい傾向があります。番組で何か問題が起きたら、自分も責任をとらなければならなくなりますからね」とのこと。

 もちろん、こうしたテレビ局による自主規制の背景には、視聴者からのクレームの存在がある。
 
 近年ではクレームの矛先は番組を放送するテレビ局やBPOだけでなく、番組のCMスポンサー企業にまで向けられるケースもあり、各局とも視聴者からのクレームに対してはかなり過敏になっている。

 的を射たクレームもある一方、中にはお笑い芸人がちょっと服を脱いだり、ツッコミの役割として頭を叩いたりしただけで「不快だ」、「暴力的だ」といった抗議がテレビ局に寄せられることもある。

 こうした過剰とも思えるクレームに対応するのは大変だなと思うが、その被害が番組スポンサーにまで飛び火し、大手クライアント企業から「テレビと関わるのは面倒だ」と思われてしまうのが一番まずいということで、テレビ局としてもそれなりの対応を迫られる。

 その結果、バラエティー番組などで食べ物を扱う際には「この後、スタッフがおいしくいただきました」といった違和感アリアリのテロップがお約束となるような“怪奇現象”も起きている。
 
 一部の勘違いした“テレビ業界人”の視聴者に対する上から目線な態度や発言、「昔のように規制が緩かったら…」といった言い訳には辟易(へきえき)したこともあるが、今となってはちょっぴり同情してしまうくらいテレビ業界をとりまく環境は厳しいものになっているようだ。