国際「レバノン国内ではヒズボラも内閣を構成している」 レバノン、「代理戦争」懸念 サウジVSイラン 首相辞意巡り

レバノンの政治情勢を巡る構図
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 【カイロ篠田航一】「身の危険」を理由に11月に辞意を表明したレバノンのハリリ首相が、アウン大統領から辞任を思いとどまるよう説得され、協議が続いている。レバノンは、イスラムスンニ派の盟主サウジアラビアと対立するシーア派国家イランの双方が影響力を強めようと画策する「代理戦争」の舞台となっており、複雑な中東情勢が首相の進退に影を落としている。

 ハリリ首相は11月4日、訪問先のサウジで突然、テレビ演説を行い、イランとシーア派組織ヒズボラを非難した上で、「私の命を狙う秘密の計画がある」と指摘。身の安全を優先して首相職を退く考えを示した。

 ハリリ首相はスンニ派だが、昨年12月の組閣の際にはイランが支援するヒズボラ出身者も閣僚に登用し「国内融和」を図った。

 イランの影響力増大を警戒したサウジがこれに激怒し、自身への暗殺計画を示唆して辞任するよう、首相に迫ったとの観測が出ている。

 ハリリ首相はサウジでの辞意表明後、フランス、エジプトを経て11月21日に帰国。翌22日にアウン大統領と協議した後、「レバノンの一体性を強化し、内紛を解決する」と述べ、辞任の一時凍結を表明した。サウジとイランとの代理戦争に巻き込まれる事態への懸念が国民の間に根強く、首相も大統領も宗派対立激化を避ける方向で一致したとみられる。

 ロイター通信によると、ハリリ首相は近く辞意を撤回し、職務続行を宣言する可能性があるという。

 レバノンは多くの宗教・宗派が混在するモザイク国家だ。アウン大統領はイランやヒズボラに近いキリスト教マロン派で、ハリリ首相との「勢力均衡」を模索し、最近は外国からの過度な干渉に警戒を強めている。11月にエジプトで開かれたアラブ連盟(21カ国と1機構)の会合では、各国がヒズボラを非難する中、レバノン代表団が「レバノン国内ではヒズボラも内閣を構成している」と述べ、非難に反論する一幕もあった。

毎日新聞 2017年12月4日 東京夕刊
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